話す準備を

話す準備をします

帰省

帰省をしている。その帰り道を思い出している。

 

福井駅で降りるため、座席から立ち上がり降車口に向かおうとした時、後ろからドドっと物音がした。一人の男が荷物を抱えきれずに通路に持ち物をぶちまけたようだ。

 

男と目が合う。「出来れば荷物持つの手伝ってほしいんですが…」という無言のアピールタイムはなく「荷物持つの手伝ってください」と0秒の間を経て言われる。持つ。というより、持たざるを得ない。


「あ、これもお願いします」なんて言われて、気づいたら彼1自分3 ぐらいの割合で彼の荷物を持っていた。駅の改札近くまで荷物を運び、彼からのお礼の言葉を背中で聞くぐらい無礼なスピードでその場を去った。

 

駅から家にはタクシーで向かうことにした。家からほど近い学校の名前を告げると「分からない」と言われる。そのほかにも目ぼしい場所を挙げるが、どれも運転手の脳内地図には載っていないらしく、最終的に「とりあえず北に」という化石のような表現でなんとか目的地まで辿り着いてもらった。


料金を支払う最中「ここ(の地名)は灯明寺なん?」と聞かれ「新田塚ですね」と答える。「じゃあ坂口さん住んどるわ」と言われ「そうなんですね」と答える。坂口さんのことは知らない。


タクシーを後にし、家に向かう途中、駅の改札が自動改札になっていたことを不意に思い出した。去年までは、大晦日だろうと元旦だろうと駅員が改札に立っていたのに。


家に帰り、母親に開口一番自動改札になっていたことを報告すると「夏頃には変わってたよ」とあっけらかんと答えられ、続けざまに疎遠になっている小学生の時のクラスメイトの姉が結婚したことを聞かされる。これもほとんど知らない人だ。

 

たわいもない話を聞き流していると、年越しそばと柔めのご飯と肉じゃがが食卓に出される。炭水化物が多い。紅白とガキ使をザッピングしながら、年越しそばから食べ始める。

 

帰省している。